真人間になるかも

新感覚癒し系魔法少女ブログ

ファッキンへの熱いまなざし

ファストフードとは悪食の代名詞のように使われていますが、私は好きです。小さい頃体に毒だ、とファストフードと炭酸をあまり食べさせて貰えませんでした。そのせいか、大学生までコーラが飲めませんでした。今はもう500mlであれば余裕で飲めるようになりました。大人になったと思います。ファストフードについては、一時期ハッピーセットのおもちゃ目当てに狂ったようにマックへ通い詰めていた時期がありました。心は5歳、私は5歳と暗示をかけ、スマイルだけで3000円は稼げそうな店員さんに「ハッピーセットください!」と意気揚々に注文するのです。3000スマイルさんは「店内でお召し上がりですか?」とマニュアル通りの返答をするわけですが、5歳の私は「あ......いや、持ち帰り......で、あの、10個ください......」と言いました。もうそこにいるのは5歳の私ではなく、ハンバーガーをおまけと考えている卑しいコミュ障の42歳の中年無職男性でした。あのときの店員さんの顔は忘れません。いつか本気で謝りたいです。

 

さて、ファーストキッチンというお店をご存知でしょうか?私は上京してきて以来、ファーストキッチンが一番好きなファストフード店となりました。ファーストキッチンは、秋田はおろか東北には存在しません。関東地方に集中的に出店しているからです。

ファーストキッチンとの出会いは高校生の時でした。ツイッターを眺めていると、あるフォロワーが「ファッキンなう!」とツイートしていました。その時、経験したことのないような衝撃が走りました。うら若き乙女が真昼間にファッキン。しかも楽し気に写真を載せている。写真をタップして画像を見ると、またまた衝撃的でした。トレイにはハンバーガー、そして撮影者のものと思われる手前のトレイには色鮮やかなパスタ。フードコートなのかな?と思ったのですが、背景を見るからに店舗という雰囲気でした。急いでブラウザを開き、グーグル検索に『ファッキン』と打ち込みました。都会には私の知らないファッキンがある……。グーグルが0.24秒で叩き出した検索結果は、ファッキンの意味、ウィキペディア、英和辞典がずらり。下にスクロールをすれば良かったものの、私は、検索結果に引っかからないような店が存在するのか......と思ってしまいました。さて、ここで当時の私がファーストキッチンに対して抱いていた歪んだイメージを挙げていきます。

  • アンダーグラウンドでの経営展開、非合法的な運営をしている飲食店
  • 法律や食品衛生管理的にグレーな食材の使用
  • ハンバーガーとパスタを同時提供できるキッチンスキルの高さ
  • 店員とファッキンし放題

 都会にはこんなハチャメチャな店があるのかという悲しみを感じざるを得ませんでした。田舎に暮らしていた高校生は、意外なところで都会との格差を思い知ったのです。

 

それから数年が経ち、大学に合格した私は上京をしました。学校が始まるまでの数週間、有り金尽きる寸前まで遊び歩きました。横浜駅周辺を散歩したり、1人でみなとみらいへ行きすれ違うカップルに対し心の中で唾を吐いたり、山手線を3週したり、非常に有意義な時間を過ごしました。とある日、横浜駅前をふらふらしていると、オレンジ色の看板が目に入りました。そう、在りし日に出会った「ファーストキッチン」でした。私は叫びだしたい気持ちでいっぱいでした。非合法的な営業をしているアンダーグラウンドハンバーガーショップ、ファーストキッチン。なぜ奴が堂々と、しかも人通りの多い横浜駅西口に出店しているのか。社長が横浜市へ賄賂を渡しているのか?と思いました。しかし、遠目から見ている分では危険そうな臭いは全くしません。むしろ、カラフルな積み木クッションに囲まれたキッズコーナーのような、安心安全誰でもウエルカム!な顔をしています。私は心を決めました。「そうだ、ファーストキッチンへ行こう」スカートを短く折った女子高校生二人組の後ろに、そっと並びました。

店内は明るい照明と綺麗なテーブルとソファ席。やっべ、都会、やっべ。語彙力のない田舎者はたじろいでしまいます。しかしここで逃げ帰れば、店員が追いかけてきてファッキンどころでは済まない目に合うのではないかと思いました。髪の毛がピンク色の田舎者はビクビクしながら注文をし、こっそり奥の席へ座りました。未知との出会い、チキン竜田サンドを一口かじります。

......えっ、やっば、うま、う、おいしい、やっば。

ネオ現代人の私はとにかく頭の中でやばいやばいと繰り返し、もぐもぐと食べ進めました。とても美味しかったのです。半分ほど食べたあたりで、セットで注文した焦がしバター醤油ポテトを食べます。

ほぎゃーー!!ポテト美味しいーーーー!!!

注文するときに一番の難所はポテトだと思います。選ぶ味で、店員さんから「こいつ分かってねえな」と思われることが非常に怖いからです。でもその難関を超えただけある。花畑のような髪色の田舎者は、頭の中まで花畑になって、お腹と知的欲求を満たして帰路へ着きました。またファッキンこようかな。いつの間にか私は奴のことを、愛情を込めてファッキンと呼んでいました。

 

ファッキンに通う中で、店員さんがとても可愛いなということを常々思っています。夕方ころ寄り道して帰る男子高校生はドキドキしないのでしょうか?私が男子高校生であれば「バイト何時に終わりますか?僕、外で待ってますから(CV:入野自由)」って言ってたと思います。男子高校生でなくとも、仮に私が在原業平だったとしましょう。ファッキンでファッキング(ファッキンで食事をすること)を終えた在原業平は、手元にあるナプキンに流暢な手つきで歌を書きます。和歌では抜群の才能を持っている彼は、周囲で黙々とファッキングする男達を見渡し「ふん……みやびを知らぬ者どもめ…」と思うでしょう。そもそもみやびな方々はファストフード店に来ません。そして、在原業平は出来上がった歌を持ってカウンターへ向かいます。昔をとこのフェロモンを全開にして、店員さんにそっとナプキンを渡します。注文ではなく突然折り畳まれたナプキンを渡された店員さんは困惑します。
「あ、あのお客様……」
「今宵、あはむ……」
オレンジ色を基調とした明るい店内に、平安装束を身にまとった不審な男がカウンター越しにそっと囁くのです。そして在原業平はそっと店を出ます。外では牛車が待機しており、ひらりとそれに乗り込むと牛車は東の彼方へ消えて行きました。呆れた顔の店員は、先に渡されたナプキンをそっと広げます。ナプキンには、達筆な文字で何かが書かれていました。
「読めねえ」
店員さんは理系でした。運悪いことに古文選択では無かったのです。
風阿禁物語〜完〜

 

在原業平 - Wikipedia

 彼は平安時代を代表するプレイボーイです